
ガイド
湯の峰温泉つぼ湯は、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として登録されている、非常に貴重な天然温泉施設です。自然の岩をそのまま湯船の壁として利用した、趣のある露天風呂が特徴です。天然の岩を板で囲っただけの小規模な造りとなっており、2〜3名で入るのに適したサイズ感です。日によって湯の色が7回変化すると言われるほど、成分の豊かな表情を見せる温泉です。自然の造形美と、歴史の重みが融合した空間が広がっています。
この地は、約1800年前の四世紀頃に、熊野の国造である大阿刀足尼(おおあとのすくね)によって発見されたと伝えられています。古くから熊野詣の際の「湯垢離場(ゆか離じょ)」として、聖地での禊ぎ(みそぎ)や、旅の疲れを癒すための重要な場所として愛されてきました。歴代の上皇も熊野御幸の際にこの地を訪れたという記録があり、日本最古の湯の一つとして、日本の精神文化と深く結びついた歴史を刻んでいます。

最大の焦点は、天然の岩肌を活かした露天風呂「つぼ湯」です。石畳や岩場、背後に流れる川のせせらぎといった自然環境が、入浴の背景として存在します。また、温泉水の持ち帰りができる「温泉くみとり場」も設置されており、温泉の質を身近に感じられるスポットです。さらに、川沿いには90度の高温の湯が湧き出る「湯筒」があり、卵や野菜を茹でる様子が見られることも、この地域ならではの風景です。
季節を問わず温泉を楽しむことができますが、特に自然の色彩が豊かになる時期には、周囲の緑や川の流れとの調和が際立ちます。つぼ湯は30分交代制となっており、混雑状況によって順番待ちが発生する場合もあります。日によって湯の色が変化するという特性があるため、訪れる時間帯によって異なる表情の温泉に出会える可能性があります。営業時間内での訪問が基本となります。

ここでは、古来より続く温泉文化に触れることができます。つぼ湯での入浴に加え、公衆浴場(一般湯・くすり湯・家族湯)も併設されており、用途に合わせた入浴が選べます。また、川沿いの「湯筒」では、温泉の熱を利用して食材を茹でる文化的な風景が見られます。土産物店などで購入した卵や野菜を、温泉の熱で調理する様子は、この地域特有の風景です。
周辺には、九十九王子のひとつである「湯峯王子」や、小栗判官伝説に関連する史跡など、歴史的なスポットが点在しています。また、川湯温泉や渡瀬温泉といった他の温泉地も近く、熊野古道の散策と合わせて、温泉郷全体の情緒を巡ることができます。
温泉施設内では、伝統的な入浴スタイルが求められます。公衆浴場にはシャンプーやボディソープが完備されている箇所もありますが、個人の持ち物についても確認が必要です。また、湯の峰地内でのキャンプは禁止されており、駐車場内での炊飯も厳禁とされています。周囲の自然環境と歴史的景観を保護するため、マナーを守った行動が求められます。英語での案内板等は、現地の状況を確認してください。