
ガイド
口羽家住宅は、山口県萩市に位置する、江戸時代の萩藩における上級武士の住居です。主屋と表門が国の重要文化財に指定されており、当時の高い身分を持つ家柄の暮らしを伝える貴重な遺構です。白壁と伝統的な建築様式が特徴的なこの住宅は、萩城下における武士の生活文化を今に伝えています。
口は、江戸時代に萩藩の「寄組」という高い地位に就いていた家系です。1674年に任命された地位が1868年まで世襲されてきました。建物自体は、18世紀末から19世紀初頭頃の様式を保持しており、1974年に国の重要文化財に指定されました。現在の建物は、江戸時代の建築様式を忠実に再現し、修復されたものです。また、表門は江戸藩邸の門を拝領して萩に移築されたものと伝えられており、歴史的な背景が深く刻まれています。

この住宅の最大の特徴は、萩市に現存する門の中でも最大規模を誇る「長屋門」です。白壁と「なまこ壁」のコントラストが美しく、内部には守衛所、馬小屋、貯蔵室が備わっています。主屋では、天井の高さが場所によって異なる点に注目してください。例えば、庭に面した部屋は女性や子供が集まる場所として天井が低く設定されています。また、主屋の中央には「相之間(あいたま)」と呼ばれる狭い空間があり、護衛が身を守るための工夫が施されています。
住宅の座敷からは、庭越しに橋本川や対岸の玉江の風景を眺めることができます。季節ごとに変化する自然の景観と、歴史的な建築物の調和が見られます。日中の明るい時間帯には、白壁の美しさや、建物の細部まで作り込まれた建築様式を明確に観察できます。

館内では、口羽家に伝わる歴史的な文物や武具の展示があります。戦場での位置を示すために使われた「馬印(桐木製)」や、江戸時代の武器である「薙刀(なぎなた)」、「袖搦(そでがらみ)」などが展示されています。これらは実戦用というよりも、参勤交代の行列などで用いられた装飾的な側面も持っています。当時の武士の生活や、儀式における道具の役割を知る手がかりとなります。
住宅のすぐ近くには、橋本川が流れており、風光明媚な景観が広がっています。また、山口県立萩美術館などの文化施設も近く、萩市の歴史を巡る観光ルートの一部として組み込むことができます。
建物内は伝統的な和室や畳敷きのスペースがあるため、靴を脱いで入場する場面があります。脱いだ靴を持ち運ぶための袋や、足元を保護するための靴下を持参すると便利です。また、歴史的な建造物を保護するため、撮影の際は指定されたルールに従ってください。現地にはガイドが常駐しており、施設に関する説明を受けることができます。