
ガイド
板室温泉は、栃木県那須塩原市の那須連山の西端、那珂川の最上流部に位置する温泉地です。1000年以上の歴史を持ち、「下野の薬湯」として古くから知られてきました。昭和46年には国民保養温泉地に指定され、現在は「ふれあい・やすらぎ温泉地」としても選定されています。自然豊かな日光国立公園内に位置しており、温泉だけでなく、周辺の自然環境を活かした様々な活動が行われています。
この地の歴史は、平安時代(1059年)に遡ります。那須郡の領主であった那須宗重が、狩りの際に温泉を発見したことが始まりとされています。その後、板室の本村の人々が旅館を営むようになり、温泉地としての形が整いました。近世には「那須七湯」の一つとして、多くの湯治客が訪れる場所となりました。また、温泉によって身体が回復し、不要となった杖を置いていく習慣から「杖いらずの湯」とも呼ばれてきた背景があります。こうした歴史的背景から、現在も湯治の文化が大切に守られています。

板室温泉には、独自の文化や自然景観が点在しています。特に注目すべきは「綱の湯」です。これは、温泉小屋の梁に結わえた綱を握り、腰以上の深さがある湯に浸かって入浴する伝統的な手法です。水圧を利用した入浴法として知られています。また、温泉街には「板室温泉神社」や「篭岩神社」、「木の俣地蔵尊」といった、古くから治癒を祈願する場所が存在します。自然景観としては、那珂川の支流にある「乙女の滝」や、高山植物が自生する「沼ッ原湿原」など、日光国立公園の豊かな生態系を間近に感じられるスポットがあります。
板室温泉は、季節ごとに異なる表情を見せます。5月から10月にかけては、沼ッ原湿原でのトレッキングや、ニッコウキスゲ、エゾリンドウといった高山植物の観察に適した時期です。夏季には、乙女の滝付近の河原で涼を取る人々も見られます。一方、冬季は積雪があるため、温泉での休息を中心とした滞在が一般的です。また、1月に開催される「板室温泉どんど焼き」のような、地域に根ざした伝統行事も、季節を感じる貴重な機会となります。
温泉での入浴に加え、周辺エリアでは自然体験フィールドとしての活動が可能です。トレッキングや、自然の中でのアクティビティが用意されており、那須岳方面への登山拠点としても利用されています。沼ッ原湿原では、整備された木道を通って高山植物や野生動物の観察を行うことができます。また、現代的なニーズに合わせた「現代湯治ワーケーション」の取り組みも行われており、温泉地での滞在を通じた新しい働き方の形も提案されています。
温泉街の周辺には、自然と触れ合えるスポットが豊富にあります。乙女の滝は、夏季には水浴びを楽しむ人々が集まる場所です。また、深山ダムやダム湖も近くに位置しており、地形の起伏が激しい山間部の景観を楽しむことができます。沼ッ原湿原は、那須岳方面へのトレッキングの出発点としても機能しており、自然観察の拠点として重要な役割を果たしています。
温泉地での滞在には、適切な準備が必要です。入浴施設や旅館での支払いは、現金、クレジットカード(Visa、MasterCard等)、交通系ICカードが利用可能な場所がありますが、小規模な施設や周辺の店舗では現金のみの場合があります。服装については、トレッキングを行う場合は歩きやすい靴や動きやすい服装を準備してください。また、温泉施設や神社への参拝時には、公共の場としてのマナーを守ることが求められます。英語による案内やメニューの有無については、施設により異なりますが、事前の確認が有用です。宿泊を伴う場合は、事前に予約を行うことが一般的です。