
ガイド
御射鹿池は、長野県茅野市の標高1,500m付近、八ヶ岳中信高原国定公園内に位置する風光明媚な池です。この池は、日本を代表する画家である東山魁夷氏の作品『緑響く』のモチーフとなった場所として広く知られています。水面が鏡のように静まり返り、周囲の山々や木々を鮮明に映し出す様子は、訪れる人々に深い感動を与えます。池の面積は約0.1ヘクタール、最大水深は8メートルで、自然の静寂と美しさが凝縮された場所です。
この池は、もともとは農業用のため池として、昭和の初め(1933年)に完成しました。かつてこの地域は、冷たい水の影響による農業への課題を抱えていましたが、湧水による加水によって水質を調整し、稲作に利用できる環境を整えた歴史を持っています。また、名称の「御射鹿(みしゃか)」は、諏訪大社に伝わる神事「御射山御狩神事」に由来するとされており、古くから神聖な土地として大切にされてきました。現在は、地域の自然環境を守りながら、多くの観光客や写真愛好家に愛される文化的なスポットとなっています。

最大の魅力は、風のない時に見られる「鏡面反射」です。周囲のカラマツ林や背景の山々が、一点の曇りもない水面に映し出される光景は、まさに芸術品のような美しさです。また、水辺にはキキョウやユリなどの植物が自生し、カモやルリイトトンボ、蝶などの生き物も観察できます。湖底には、酸性を好むチャツボミゴケが繁茂しており、この独特の環境が生み出す自然の造形美も、この場所ならではの特徴です。
御射鹿池は、訪れる時期や時間帯によって、その表情が劇的に変化します。春には新緑の鮮やかさが、夏には深い緑の静寂が、秋には黄金色に輝く紅葉が、そして冬には雪と氷に閉ざされた白銀の世界が広がります。また、一日のうちでも、光の角度によって水面の反射具合や周囲の色彩が異なるため、午前中の澄んだ空気の中での風景や、光が柔らかくなる時間帯など、時間帯ごとに異なる美しさを観察できます。

ここでは、自然の造形美を静かに観察すること、そして写真を撮ることが中心となります。東山魁夷の作品の世界観を感じながら、静寂の中で自然と向き合う時間は、日常を離れた特別な体験となります。地元の保存活動によって整備された遊歩道(柵付き)から、安全に、かつ間近に自然の美しさを眺めることができます。自然の音に耳を傾けながら、静かな時間を過ごすことができます。
御射鹿池の周辺は、奥蓼科温泉郷や蓼科高原といった、自然豊かな観光エリアに位置しています。周辺には、自然散策を楽しめるハイキングコースや、地域の歴史を感じるスポットが点在しています。また、近隣には宿泊施設も多く、自然に囲まれた環境での滞在を楽しむことができます。
