
ガイド
源兵衛川は、静岡県三島市を流れる全長約1.5kmの河川です。その起源は、富士山の湧水が集まる楽寿園内の小浜池にあります。かつては農業用水路として整備された歴史を持ちますが、現在は「水の都」と呼ばれる三島市の象徴的な景観として、市民や行政、NPOが一体となって守り続けている美しい水辺空間です。環境省の「平成の名水百選」や農林水産省の「疏水百選」にも選定されており、自然と都市が調和した景観は、土木学会のデザイン賞も受賞しています。
この地の歴史は古く、室町時代の豪族である寺尾源兵衛が、灌漑のためにこの水路を掘削したことが名前の由来とされています。かつては生活に密着した農業用水路として、野菜を冷やすためにブリキの船が利用されるなど、人々の暮らしを支える重要な存在でした。しかし、高度経済成長期には都市化による水質悪化や水量の減少に見舞われました。その後、1990年頃から始まった「源兵衛川水環境設備事業」により、コンクリートの護岸から自然に近い多自然型工法へと改修が進められました。この再生事業により、自然の生態系と都市景観が融合した現在の姿が築かれました。

源兵衛川には、景観に彩りを添える12の橋が架かっています。例えば、歴史を感じさせる「時の鐘橋」や、情緒ある「源兵衛橋」など、橋ごとに異なる表情があります。また、川沿いには散策路が整備されており、水面に映る富士山の姿や、豊かな植生を眺めることができます。水辺にはミシマバイカモやヤナギモといった希少な植物、そしてメダカやトウヨシノボリなどの多様な水生生物が生息しており、自然の生態系を間近に感じられる点も大きな魅力です。また、中郷温水池へと続く水の流れは、地域の農業を支える重要な役割も担っています。
源兵衛川は、一年を通じて美しい水辺の風景を見ることができます。特に、晴天時の日中は、水面に映る富士山の景色や、透明度の高い湧水の美しさが際立ちます。季節ごとに異なる植物の様子や、水辺の生物たちの動きを楽しむことができます。夜間は、街の明かりと川のせせらぎが静かな雰囲気を作り出し、昼間とは異なる落ち着いた景観となります。

特別な設備や有料の体験プログラムはありませんが、川沿いの散策路を歩くことが最大の楽しみです。水辺の環境調査や保全活動を行うNPOなどの活動も盛んであり、自然環境の再生プロセスを、景観を通じて感じることができます。散策しながら、水辺に生息する多様な動植物の観察を行うことができます。また、周辺のカフェや飲食店を巡りながら、水の流れを感じるリラックスした時間を過ごすことができます。
源兵衛川の周辺には、三島市の豊かな文化を象片するスポットが点在しています。水源である「楽寿園」では、富士山の湧水を利用した池や、豊かな自然環境を探索できます。また、川沿いには歴史的な橋や、地域に根付いた景観が広がっており、三島駅からもアクセスが良いため、観光の合間に立ち寄るのに適しています。中郷温水池方面へ向かうルートでは、農業と水の関わりをより深く知ることができます。

散策を楽しむ際は、歩きやすい靴での訪問を推奨します。川沿いの散策路は整備されていますが、自然環境の中ですので、動きやすい服装が適しています。