ガイド
エリスマン邸は、スイス出身の生糸貿易商、フリッツ・エリスマン氏の邸宅として建てられた歴史的な西洋館です。設計は「近代建築の父」と称されるチェコ出身の建築家、アントニン・レーモンドが手掛けました。大正14年(1925年)から大正15年(1926年)にかけて建設されたこの邸宅は、水平線を強調した木造モダニズムのデザインが特徴です。一度は解体されましたが、その歴史的価値から1990年に現在の元町公園内へ移築・復元されました。現在は横浜市認定の歴史的建造物として、当時の美しい意匠を今に伝えています。
この邸宅の主であるフリッツ・エリスマン氏は、スイス・チューリッヒ出身の生糸貿易商社シーベル・ヘグナー商会の支配人として来日しました。設計者のアントニン・レーモンドは、世界的建築家F.L.ライトの助手として来日した経歴を持ち、その影響を受けた独自のスタイルを確立しました。建築には「自然、単純、直截、正直、経済的」という理念が反映されており、機能的でありながらも美的な調和が保たれています。エリスマン氏の没後、建物は一度解体の危機に瀕しましたが、横浜市によって部材が買い取られ、現在の場所でその姿が再現されました。日本の近代化とともに歩んだ、国際色豊かな横浜の歴史を象徴する建物の一つです。
館内では、設計者レーモンドの思想が反映された美しい空間を細部まで見学できます。1階には、暖炉が設置された趣のある応接室や、居間兼食堂、そして庭の景色を望むサンルームがあります。家具の多くはレーモンド自身が設計したもので、モダンなデザインの真髄に触れることができます。2階はかつての寝室や浴室があった場所であり、現在は山手や洋館に関する貴重な写真や図面が展示されています。また、かつての厨房部分は「Café Ehrismann」として改装されており、歴史的な空間の中で飲食を楽しむことができます。外観では、青緑色の鎧戸(よろいど)や、垂直・水平のラインを強調した壁面のデザインが目を引きます。
明るい日中の時間帯は、大きな窓から差し込む自然光によって、白亜の壁や木造の質感がより鮮明に感じられます。サンルームからは、周囲の緑豊かな公園の景色を楽しむことができ、季節ごとの風景の変化を感じるのに最適です。また、カフェを利用する際は、ゆったりとした午後のひとときを楽しむのがおすすめです。歴史的な建築に囲まれながら、穏やかな時間を過ごすことができます。
エリスマン邸では、単なる建築見学だけでなく、日常の延長線上にある特別な体験が可能です。かつての厨房スペースを利用した「Café Ehrismann」では、歴史的な雰囲気の中でカフェタイムを楽しむことができます。また、地下ホールは貸しスペースとしても利用されており、展覧会などのイベントが行われることもあります。建築ファンにとっては、レーモンドの設計思想を肌で感じられる貴重な機会となるでしょう。
エリスマン邸が位置する元町公園周辺は、横浜の歴史的な雰囲気を感じられるエリアです。近くには「ベーリック・ホール」や「山手234番館」といった他の西洋館もあり、あわせて散策することで、より深く横浜の西洋館文化に触れることができます。また、元町・中華街エリアへのアクセスも良く、ショッピングやグルメと共に歴史散策を楽しむことができます。
館内を見学する際は、床面保護のため、備え付けのスリッパに履き替える必要があります。また、歴史的な家具や装飾品、壁などに触れないよう、丁寧な見学をお願いします。写真撮影については、他の来館者の迷惑にならない範囲での記念撮影は可能ですが、三脚、レフ板、自撮り棒などの機材を使用した撮影や、商業目的の撮影は事前に横浜市の許可が必要です。展示品を保護するため、また安全な見学のために、ルールを守って楽しみましょう。