
ガイド
早川町赤沢伝統的建造物群保存地区は、山梨県南巨摩郡早川町に位置する、日本の伝統的な集落の姿を今に伝える貴重なエリアです。平成5年には国から重要伝統的建造物群保存地区として選定されました。この地区は、周囲を豊かな山々に囲まれた自然豊かな環境の中にあり、地形に沿って配置された伝統的な家屋や、石畳、石段、古道といった歴史的な構造物が、周囲の自然景観と密接に調和しています。保存されている建造物や環境物件の数は、歴史的な集落としての形態を色濃く残しており、訪れる人々に日本の原風景を感じさせます。
赤沢は、中世の頃から聖地である身延山と、霊場である七面山を結ぶ参道の宿場として重要な役割を果たしてきました。江戸時代初期、徳川家康の側室であるお万の方の功績によって七面山の女人禁制が解かれたことや、その後、富士講や身延講といった山岳信仰が盛んになったことで、七面山への参詣者が急増しました。これに伴い、参道が整備され、寺院や坊が置かれるようになると、赤沢は講中(信仰のグループ)の宿場として発展しました。明治初期には、参詣客を案内する強力や荷を運ぶ業も盛んになり、集落内には多くの旅籠屋が立ち並びました。大正から昭和にかけては、身延線の開通とともにさらなる賑わいを見せましたが、交通手段の変化に伴い、現在は静かな歴史的景観を保存するエリアとなっています。

この保存地区には、歴史の各時代を示す多様な建造物が存在します。具体的には、84戸の伝統的建造物(主屋、蔵、外便所、付属屋)や、39件の工作物(石碑、石塔、石仏、門)、そして118件の環境物件(石垣、湧水池、古道)が登録されています。古い家屋の中には、寛政4年(1792年)や天保4年(1833年)に建てられたものもあり、当時の小屋組構造や、草葺き、笹板葺きといった伝統的な屋根の形式を今に伝えています。また、明治・大正期に増築された2階建ての旅籠屋など、時代の変遷を感じさせる建築様式も見どころの一つです。
赤沢宿は、四季折々の自然の変化を楽しむことができる場所です。春から夏にかけては、周囲の豊かな緑が美しく、山間の清涼な空気の中で散策が楽しめます。秋には周囲の山々が紅葉し、歴史的な町並みと色彩豊かな自然のコントりょうが際立ちます。また、記念イベント等の際には、建物に設置された日本画の作品の公開や、ライトアップイベントが行われることもあり、夜の静かな雰囲気の中で歴史的な景観を楽しむ機会もあります。

ここでは、歴史的な町並みを歩くことで、かつての宿場町の空気感を感じることができます。石畳や古道を歩きながら、かつての旅人が歩んだ道を辿る体験は、日常を離れた特別な時間を提供します。また、地域の文化を伝える日本画の作品展示など、芸術的な側面からも地域の歴史に触れることができます。自然と調和した静かな環境の中で、日本の伝統的な暮らしの形態を視覚的に学ぶことができます。
早川町内には、自然体験やキャンプ、温泉、登山を楽しめるスポットが点在しています。赤沢宿の周辺は山岳信仰の歴史がある地域であり、自然豊かな環境での登山や、南アルプス方面へのアクセス拠点としても機能しています。歴史散策の後は、周辺の自然環境を活かしたアクティビティを組み合わせることで、より深い旅の体験が可能です。

赤沢宿の散策にあたっては、以下の点にご注意ください。まず、土地や建物は住民の方々の所有物です。景観を維持し、プライバシーを守るため、立ち入り禁止区域や私有地への無断立ち入りは厳に慎んでください。また、石畳や階段、古道などの地形があるため、足元に注意が必要です。文化財を守るため、建物や工作物への接触には十分な配意をお願いします。